2018.11.6

なぜ中小企業のマーケティングはその場限りの広告企画で毎回終わってしまうのか?

営業部から生え抜きでマーケティング担当となったマーケターやWEB担当者であれば、普段実施する広告企画が、どうもその場限りのトライアンドエラーで毎回終わってしまっているのではないか、出稿した広告が自社のビジョンや事業戦略につながっているのだろうか、このままで良いのだろうかと、漠然とした不安の種になっていることが往々にしてあります。

日々の広告宣伝活動が顧客とのコミュニケーションに大きな影響を与えていることは間違いなく、顧客関係性を醸成していくことの重要性は、多くの専門文献やセミナーなどですでに言われています。これに関して、マーケティング担当者もおおむねの理解は持っています。しかしながら、現状の広告企画の単発的な繰り返しだけで、果たして本当に顧客との良好なコミュニケーションが実現できているのだろうか、自社ならではの顧客関係性が構築され、事業戦略にふさわしい内容となっているのだろうか、そのような疑問を抱く担当者も多いように思われます。

どうして広告企画が事業戦略から逸脱しているように思えるのか

短期的な広告企画は、長期的な事業戦略との間に一貫性が求められるものだと誰もが考えます。これは正しいことです。しかし、ここに一抹の不安が残るのは、実にコミュニケーション戦略の不在が原因なのです。本来であれば、事業戦略からコミュニケーション戦略が打ち立てられ、そのコミュニケーション戦略にひもづく形で広告企画やクリエイティブが実施されていくべきです。


※広告・クリエイティブは事業戦略からコミュニケーション戦略を通してブレイクダウンされていく。

ところが、ほとんどの企業では、例えば売り出したい製品やサービスを、どのような広告企画で宣伝していくかという議論になりがちです。議論すべきは、『事業戦略からコミュニケーション戦略をどのように策定し、その上で広告企画やクリエイティブにどう落とし込むか』ということです。これが明確になると、極めて容易に事業戦略とひもづく広告宣伝活動を行っていくことができます。広告企画やクリエイティブに落とし込む作業は、広告代理店の仕事であることが多く、企業内のマーケターは前半部分、つまりコミュニケーション戦略の策定に注力する必要があります。

コミュニケーション戦略を導き出す方法論がない?

しかしながら、問題はコミュニケーション戦略策定の方法論が企業内で全く育っていないことです。これは企業を取り巻く外部環境の変化が要因の一つに挙げられます。広告代理店やPR会社などに提案依頼(オリエンテーション)をしようにも、商品まわりの状況は見る見るうちに変わっていきます。新しい市場が生まれたり、競争環境が変わったりすることで、ベースとなる事業戦略も、それに応じて変化していかざるを得ない状況になっています。こうなると即座に顧客コミュニケーションも呼応していくべきですが、実際に選抜され実施される広告企画やクリエイティブは、その場で反響がありそうな一朝一夕のうちに作り出されたものばかりなのです。

広告代理店やPR会社を使うことが悪いわけではありません。むしろ大いに協力してもらうべきです。しかしながら、彼らの役割はあくまで広告キャンペーンの企画、それを遂行するメディア戦略の構築、クリエイティブ制作です。広告主サイドの顧客コミュニケーション戦略の立案は基本的に彼らの役務外であるどころか、社外の人間である以上、知る由もありません。コミュニケーション戦略を打ち立てていくべきは、社内にいるマーケターの役割です。マーケターはコミュニケーション戦略を示し、広告代理店やPR会社に『自分たちが中長期的に何をやりたいのか』ということを伝える必要があります。事業や環境の変化が起こった際には即応し、顧客コミュニケーションをどのように転換させていくべきかを考えることもマーケターの腕の見せどころとなります。

コミュニケーション戦略策定は既知のフレームワーク三つで完成する

コミュニケーション戦略が明確になると、事業と広告・宣伝に一貫性が生まれ、それぞれの広告キャンペーンや中期的なコミュニケーション施策において、何を目標にし、どうマネジメントしていけばよいかが鮮明に見えてきます。

そして、具合の良いことにコミュニケーション戦略策定のために必要な三つのフレームワークとは、実はすでに誰もが知るオーソドックスなものなのです。

STP分析(市場/ターゲット/ポジショニング)

これは製品やサービスそのもののSTP分析ではありません。自分たちが実施しようとするコミュニケーションのSTP分析となります。地域密着型の自動車ディーラーであれば、新車ブランドのSTPを考えるのではありません。例えば、同社のターゲットとなる地域のファミリー層向けにキッズ会員プログラムを作ったとします。その会員になってもらうためのコミュニケーションを行う場合、一体誰が競合で、どんな家族がターゲットで、どういうポジショニングを取るべきであるかということを明確にしていくのです。これがないがしろにされると、単なるキッズ会員プログラムの認知向上広告となってしまうかもしれません。

ペルソナとカスタマーコンテクストマップの作成

まず、ペルソナはご存じの通りです。ターゲットの理想の顧客プロファイルとして綿密に考える必要があります。

そして、カスタマーコンテクストマップの作成とは、ターゲットが日常のどんな生活シーンで、どのような欲求や不満を持つかという感情文脈を洗い出す作業です。カスタマージャーニーではありません。ターゲットのあらゆる生活シーンにおける感情文脈を洗い出しさえすれば、そこに共通点を見出すことができます。これらは、ターゲットの価値観(共感ポイント)であり、通常3~6点くらいに集約することができます。

機会と課題の整理(クロスSWOT分析)

これも広告施策ありきでの機会や課題を整理するのではありません。先述の2点を考察した上で、実施したいコミュニケーションや事業そのものにおける機会と課題を分析します。機会と課題を整理することで、外部環境と自社の強み、今回やりたいコミュニケーションを擦り合わせることができます。

以上、三つのフレームワークを考えれば、コミュニケーション戦略は十分に作り出すことができます。そして、それを広告代理店やPR会社に説明できれば、彼らの提案力を最大限活かせる提案依頼(オリエンテーション)ができるようになるのです。実施したいコミュニケーションを、いつ、どこで、どのようなクリエイティブで形作っていくべきか、彼らが必然的に導き出せるようになるからです。


コミュニケーション戦略の存在が広告宣伝のマネジメントを容易にする

さらに、広告・宣伝企画を実践していく上で、コミュニケーション戦略は関係者同士の約束事となります。都度の広告企画が、打ち立てたコミュニケーション戦略のどの部分を担い、どの程度成功したのか、関係者全員が同じ基準のもと、定量的にも定性的にも把握することができるようになります。つまり、顧客コミュニケーションがうまくいっているか評価することができ、容易にマネジメントできるようになるのです。

コミュニケーション戦略は自分たちで考え、積極的に広告代理店やPR会社にアウトプットしていくものであることを忘れてはいけません。提案依頼(オリエンテーション)の場は、広告したい商品の仕様やサービス概要を伝えるための機会ではありません。広告したい商品やサービスが、自社の事業戦略からコミュニケーション戦略を通して、どのように生まれてきたのかという経緯を伝える場なのです。

コミュニケーション戦略をスピーディにまとめ、簡単に伝える方法

コミュニケーション戦略は、①STP分析、②ペルソナとカスタマーコンテクストマップ作成、③クロスSWOT分析さえできれば、作り上げることができると述べました。

しかしながら、社内のマーケターがコミュニケーション戦略を作ったところで、広告企画の提案依頼、検討・決定が属人的になってしまえば、やはり分断的な広告企画を連発しかねません。特に関係者が多くなる場合は、コミュニケーション戦略をいかにシンプルに伝え、スピーディに関係者全員に理解してもらえるかもポイントとなります。

このような課題には、あらかじめ提案依頼書と提案評価シートのフォーマットを自社で固めておくことをお勧めします。広告代理店やPR会社に提案を依頼する際に、最低限示すべき必須項目をリストアップしたものが提案依頼書フォーマットとなります。そして複数の広告代理店から提案を受けた際に、各々の提案に対して、評価すべきポイントをまとめた採点表が提案評価シートとなります。

「リブノバ」を運営する弊社リブ・コンサルティングでは、これまで数多くの企業のコミュニケーション戦略策定および推進のサポートを行ってきました。先述の三つのフレームワークを基本とし、それらをわずかA4・1枚の提案依頼書、提案評価シートの基本フォーマットに落とし込むことで、クライアント企業のコミュニケーション戦略に最適な広告企画を広告代理店から引き出すことに成功してきました。三つのフレームワークができていれば、提案依頼書フォーマットのすべての項目を簡単に埋めることができます。オリエンテーションの場では、完成した提案依頼書をベースに、自社のコミュニケーション戦略を容易に広告代理店に説明することができます。そして、提案評価シートを使うことで、各広告代理店から受ける提案を公正かつ迅速に評価し、最適な広告企画を選び抜くことができるのです。