2018.11.1

顧客ロイヤルティの向上とカスタマーサービスの関係性

あなたの仕事上での肩書が、カスタマーサービスリーダー、マーケター、コンタクトセンター・スーパーバイザー、ウェブデザイナー、コンサルタント、小規模企業の経営者、CEOなどいかなるものであっても、自身が顧客として様々な製品やサービスを購入する決断を、1週間に何百回と下していることでしょう。

そこで自身が顧客の立場に立った場合に、次の2つの質問について考えてみましょう。

1.あなたが取引または購入する理由が「その卓越したカスタマーサービスによるものだ」という企業はどこか?
2.ひどいサービスを受けたせいで購入をやめた、取引を断ったことがある企業はどこか?

多くの人は2番目の質問には答えやすいものの、1番目の質問に即答できる人は少ないのではないでしょうか?
なぜ顧客はサービスの優れた会社をほめるより、サービスのおそまつな会社を切り捨てる方がずっと早いのでしょうか?

21世紀のビジネスでは、製品のみならずブランド・プロミス(ブランドが顧客に提供を保証する価値)が大衆化することを避けて通れないのが現実です。もし自社の特色を出せる何かを見つけても、ライバル企業はすぐにそっくり同じ製品やサービスを世に出したり、同じことを主張したりしてきます。そのため、8割の顧客の目には、企業ブランドのほとんどがおおよそ似たり寄ったりの大差ないものに映っているのです。

このような状態の中で、差別化を図るために企業が目を向けてきたのが「カスタマーサポート」です。これには日常的なサービスの提供だけでなく電話またはウェブで提供される問題解決の経験も含みます。

企業はカスタマーサポートを通じ、上質のサービスを提供することで他社と差別化を図り、顧客ロイヤルティを構築しようと努めるべきなのでしょうか?

顧客ロイヤルティについて考えるにあたり、ここでは「ロイヤルティ」を

1.顧客があなたの会社から引き続き購入する「再購入」
2.時間の経過とともに顧客があなたの会社から購入する割合が増える「顧客内シェア」
3.顧客が家族や友人、同僚、見知らぬ人にまであなたの会社をほめる「アドボカシー」

という3つの言葉に定義づけします。

ロイヤルティは顧客の「保持」や「囲い込み」の領域をはるかに超えたものであり、ロイヤルティが確立しさえすれば、顧客は競合他社から決して購入しようとしないでしょう。顧客は必要に迫られたからではなく、自ら望んで顧客であり続けるのです。さらにロイヤルティが高い顧客は距離を置いたりせず、取引する価値があると他者にも話してくれます。これこそが本物のロイヤルティです。

多くの企業では、顧客満足がロイヤルティに直結すると信じています。企業が顧客を喜ばせようと努めるのは、サービスに対する顧客の期待を上回ることで多大な経済的利益を得られると強く信じているからです。ですから、期待が満たされただけの顧客ロイヤルティは低く、期待以上のサービスを受けた顧客ロイヤルティは著しく高まると考えます。この考えは世界中の企業にしっかりと根付いており、逆にサービスが顧客の期待を下回れば、ロイヤルティも当然低くなるというのが共通の認識となっています。

顧客ロイヤルティに対する疑問

さて、顧客ロイヤルティについては以下の3つの根本的な疑問に集約されると言えます。

1.顧客ロイヤルティを高めるうえで、カスタマーサービスはどの程度重要か?
2.顧客ロイヤルティを高めるためにカスタマーサービスができることは何か?
3.どうすればカスタマーサービスは運営コストの削減とロイヤルティの向上を両立することができるか?

これら3つの重要な疑問の答えを紐解いていった結果、以下の4つの結論が導き出されています。
以下順に見ていくことにしましょう。

結論1.喜びの戦略は割に合わない

期待以上のサービスを受けた顧客と期待が満たされただけの顧客のロイヤルティには全く差がありません。

企業は顧客の期待を満たすことのメリットをひどく過小評価する傾向にあり、顧客は期待を満たすものが手に入ればそれで満足することが分かっています。

また企業は、顧客の期待を上回ることから得られるロイヤルティを過大評価する傾向にあります。しかし、顧客の期待を上回ることは、単純に顧客ロイヤルティの向上にはつながっていかないのです。顧客の視点からすると、何か問題が起きた際、解決に力を貸してほしい気持ちが大半を占めています。感動させる必要はないから、問題を解決した上それまでやっていたことが再びできるようにして欲しいだけなのです。

顧客の期待を上回るサービス提供戦略においては高い事業運営コストがかかります。その上、多くの顧客は期待以上のサービスを受けていないというのが現実です。企業は顧客ロイヤルティ向上のために、基本的な能力、プロとしてのサービスなど、基本的なサービス提供を日々正しく実践することが何より重要となります。

結論2.満足度はロイヤルティの予測因子ではない

多くの経営陣が強い結びつきがあると想定してきた「満足度」と「ロイヤルティ」の相関関係は決して高くありません。その企業のサービス提供には満足したものの、その企業との取引をやめ、他から購入しようと思う顧客も少なからずいます。しかしその一方、満足していない顧客だとしても、また同じ企業から購入する気がある人の割合は同じぐらいいるのも事実です。

結論3.カスタマーサービスはロイヤルティでなくディスロイヤルティを引き起こす可能性が高い

カスタマーサービスは通常、何か問題が起きた後でなければお呼びがかかりません。問題を抱えた顧客を、問題が生じる前のスタート地点に戻すのが努めです。多くの企業は顧客の期待を満たすこともできていないので、顧客がカスタマーサービスに連絡すると、逆に企業に対するロイヤルティを失ってしまい、状況を悪化させてしまいます。

ロイヤルティを失った顧客は否定的な口コミを流し、他の顧客にまでその否定的なディスロイヤルティ(顧客ロイヤルティを低下させてしまう要因)を波及させる可能性が高いです。現在ウェブやソーシャルメディアを使った口コミは、顧客にとって自分の意見を主張する手軽な手段であるという現実がありますが、よくないカスタマーサービスの経験が否定的な口コミを招く可能性は非常に高い反面、素晴らしいカスタマーサービスについて顧客が肯定的な口コミをする可能性は極めて低いと言えます。残念ながらカスタマーサービスに関して世間に広まる口コミの大部分は否定的なものなのです。

顧客は製品を理由に企業を選びながら、カスタマーサービスの失敗のせいでその企業から離れていくことがたびたびあります。

カスタマーサービスの役割は顧客のロイヤルティを向上させるのではなく、顧客のディスロイヤルティを緩和することが重要となっているのです。

結論4.ディスロイヤルティ緩和のカギは顧客に対する努力の軽減

ディスロイヤルティを引き起こす具体的要因には以下のようなものがあります。

「問題を解決するためにたびたび連絡を取らなければない」
サービス担当者が将来を見越した解決方法を提示することによって、無駄に電話をかけなおさなくてよくなると、どれだけ気分爽快なことでしょう。

「提供されるサービスが画一的である」
私たちは、カスタマーサービス担当者が一人ひとりにあったカスタマーサービスを提供していないと感じ、適当に扱われるとどれだけ苦痛であるかということを顧客として常日頃経験しています。適切な対応をされていないと感じれば、顧客はもっと優秀な企業やサービスを探し回るということが、高い確率で起きています。

「情報の繰り返し」
カスタマーサービスにおいて、同じ話をもう一度上司に説明し顧客に二度手間をかけさせたり、タッチパットで入力したそばから口座番号を復唱したりするなど、無駄な労力をかけることはざらにあります。

「解決のためのさらなる努力の認識」
多くの企業はカスタマーサポートに対する顧客の認識にうまく対処する多大な機会を逃しています。丁寧に作り上げられ、練られた言葉の使い方を担当者に指導せず、結果として顧客の理想に届かない結果を導いています。

「たらい回しにされる」
例えば顧客が問題をオンラインで解決できずにさらにサービスセンターに電話せざるを得なくなった、といった場合などです。顧客をたらい回しにしない事こそが、カスタマーサービスのディスロイヤルティを緩和する非常に重要なポイントと言えるでしょう。

顧客のディスロイヤルティを引き起こす要因は、問題解決のために顧客が投じなければならない手間や努力の量に関係しています。顧客に努力させる必要があまりない企業が、優れたカスタマーサポートを提供していると言え、それにより顧客ロイヤルティを飛躍させているのです。