2018.10.22

顧客側の努力を減らしディスロイヤルティを緩和する

多くの組織やマネジャーが、顧客を喜ばせることでロイヤルティを高めることを追求しようと日々悪戦苦闘していますが、効果がなかなか得られないことを痛感しています。その理由を探るため、世界中のカスタマーサービスを調査したところ「カスタマーエクスペリエンスが顧客のロイヤルティを高めるどころか低くしてしまうこと、そしてサービスにおけるやりとりを通じて顧客のロイヤルティを向上させることは難しい」ことが判明しました。つまり、お客様を喜ばせるための戦略はたまに成功するかもしれませんが、常に勝てる戦略では決してない、ということなのです。喜びはロイヤルティを向上させる効果の低い方法であり、あいまいで定義するのが難しいものなのです。

これに対して、「顧客側の努力の軽減」に向けてなすべきことは、具体的であり目的がはっきりしています。顧客側の努力を増やす要因として「再問い合わせ」や「転送」、「チャネルの転換」などといった白黒の区別が明確に存在していることから、

・顧客は情報を転送されたか?されなかったか?
・情報を繰り返し説明しなければならなかったか?その必要はなかったか?

といった二者択一の性質から、ほとんどの企業で顧客側の努力を減らすための要因を測定できるのです。

現場スタッフの観点からすると、お客様へ喜びを与える戦略では、担当者に何をしてほしいか指示がなければコストおよびリスクが高いものとなってしまいがちです。多くの企業のサービス担当者は顧客を喜ばせることにあまり関心がなく、顧客を喜ばせることを求められたら自分のスキルをさらに高め、可能な限り感じよく相手に共感しなければならない、と解釈することでしょう。

中には腹を立てた顧客をなだめるのに値引きや払い戻し、景品を与える、と受け取る人も出ることでしょう。お客様を喜ばせる戦略はスタッフの数だけ解釈が何通りもあることになるのです。

しかし

・顧客のためにできるだけ物事を簡単にするよう指示する
・顧客が再度電話をかける状況を作らない
・自ら対処できるのに電話を転送しない
・顧客に説明を繰り返しさせない
・全員に同じ対応をしない

といったちょっとした行動に気を付けることがチームに浸透したらどうでしょう?これならサービス担当者は何とかできるかも、と思いませんか?

カスタマーサービス担当者がすべきこと

カスタマーサービス部門の業績にとって最も重要な成果である顧客のロイヤルティを生み出し、会社を成功させたいと思うなら顧客側の努力の軽減をサービスの中核に据える必要があることに気づかなければなりません。カスタマーサービス担当者がなすべきことは「顧客側の努力を減らすこと」です。悪いサービスを排除するのはもちろんですが、より重要なことは、すべての顧客の期待を上回ることであり、顧客の多くのロイヤルティを向上させることです。

ちなみに、喜びの戦略は以下の3つのことから機能しないことは明白です。

・顧客を喜ばせられることはまれであり、たとえ出来たとしてもただ期待を満たした時に比べ、大幅なロイヤルティの向上にはつながらない

・カスタマーサービスのやりとりはロイヤルティと比べてディスロイヤルティを促進させる可能性が数倍高い

・喜びを与えるためのサービス最適化は、リソース、投資、業績評価指標、インセンティブのいずれも、顧客のロイヤルティを低下させる顧客側の努力の原因の低減・排除に焦点を当てていない

これと対照的に、顧客側の努力軽減の戦略は顧客に対して最も基本的サービスの約束実行です。顧客は問題が起きても前向きに生きていきたいだけであって、喜ばせてほしいなどとは全く思っていないのです。

つまり、カスタマーサービス担当者がすべきことは、「顧客の望みを邪魔する障害物を取り除くこと」なのです。

顧客からの電話は、カスタマーサービス担当者にとってこの上なく重要なものであっても、顧客にとってはそうではありません。カスタマーサービス担当者の役割は、顧客の生活を速やかにかつ効率的に元通りにするためにできることを行い、自信をもって「問題が解決された」と言えなければなりません。

顧客側の努力を引き起こす要因に注目すれば、悪いサービス対応をなくしロイヤルティの低い顧客を通常の状態にすることができます。顧客に「期待以上のサービスだった」と言わせるよりも、「おかげさまで手間がかからなかったよ」と言わせるほうが断然よいわけです。

顧客側の努力を要しないサービスの4原則

さらに、再問い合わせ、チャネル転換、画一的なサービス、努力の認識、などといった顧客側の努力の性質を知ることにより、顧客側の努力をあまり要しないためのベストプラクティスを考えてみることにしましょう。

顧客側の努力がそれほどいらない企業では、以下の4つのことを実行しています。

1.顧客側の努力がそれほどいらない企業は、セルフサービス・チャネルの有用性を高めています。つまり顧客をそもそも電話せざるを得ない状況に置かないことで、チャネル転換を最小限に抑えているのです。これらの企業は近年、顧客の嗜好が企業の力を借りずに自分で問題を解決する、また自分で作業する方向へ劇的に変化していることを認識しています。

また、顧客が求めるものが必要以上に多いオプション機能でなく、望まない限り電話しなくてもよい、シンプルで直感的な問題を解決へと導くものであることも理解しているのです。

2.顧客が電話せざるを得ない場合、顧客側の努力がそれほど必要ない企業は、問題を解決するだけで終わりにしません。サービス担当者に対し、次の問題回避策を実施して以降の電話を食い止めるように指示します。これらの会社は初回解決率を目標にしているわけでなく、顧客の電話が問題解決のためのステップに過ぎないと認識しています。

3.顧客側の努力がそれほどいらない企業は、サービス担当者に対し、サービスの感情面にうまく対応できるように指導しています。顧客に対して単に感じよくすればいいわけでなく、人間心理と行動経済学の原則にのっとった高度な経験工学戦術を使い、サービス担当者が顧客とのやり取りに積極的に対処できるようにする必要があるのです。

4.最後に、顧客側の努力がそれほどいらない企業は、スピードと効率よりも努力のいらない体験を提供する権限をサービス担当者に与えています。例えば「チェックリスト」といった長年組織に染み付いたツールを手放し、サービス担当者に高度な判断をするための決定権と機会を与えるのです。つまりこれらの企業は、提供される体験の質について強い主導権を握るためには、提供する側の人間により主導権を認める必要があると理解しているのです。

もし現在、あなたの会社で顧客側の努力を要していると感じているのであれば、これらの4つを実行することで、他社よりも素早いスタートを切り、顧客への努力いらずのエクスペリエンスの提供を目指し、目に見える進歩を遂げることが可能となるでしょう。そうすることで顧客のロイヤルティ低下を防ぐことができますし、このことがカスタマーサービス業務の最も重大な責任といえるものなのです。