2018.9.10

中国テック企業主導で進む次世代自動車産業レポート

①モビリティ
‐外資・ローカルメーカーの動き
‐自動運転に関する法規制等
‐EV/PHEV関連メーカーの動き
‐シェアリング等の交通サービス

注目度の高まる中国モビリティ業界において、テック企業が鍵を握る自動運転やEV領域の法整備や主要企業の動向についてレポートします。

自動運転産業の各領域と主要企業について

上記図は自動運転産業の各領域分類と領域ごとの主要企業をまとめたもので、特筆すべきは上流工程に人工知能系や半導体チップやセンサー系を含むデータ取得機器企業が位置し、既存の自動車メーカーが車体組立レイヤーとして位置されていることです。モビリティ・アズ・サービスの要になるライドシェアリングのDiDi(Uberの中国版)はエンドサービスレイヤーに位置しています。

*2018自動運転産業報告

自動運転界隈の中国の動きとして注目はやはり百度(バイドゥ)の”Apollo計画”です。(日系ではホンダやパイオニアが参画)

従来の車メーカー、EVメーカー、学術機関を巻き込んで、自動運転開発のプラットフォームを形成し、百度の地図データを含む障害物検知、走行プランニング、クラウドシミュレーション、高解像度(HD)マップ、エンドツーエンドのディープラーニングなどのデータリソースを使える開発環境を提供しています。

下図のように中国は次世代の自動車産業において独自のエコシステムを構築しようとしています。ネット大手企業が既存メーカーよりも上層に位置し、より政府や自治体に近い構造になっています。アリババが提唱する言葉に”新リテール(新小売)”があります。同社が出資をしているフーマースーパーではアプリ注文によりバイクでの30分配送を実現しています。また、購買データが蓄積されることで、推薦商品やキャンペーン情報も届き、オンラインで全て完結する仕組みとなっています。そんな中、実店舗では新たな購買体験の提案となるような仕組みがちりばめられており、店内の海鮮コーナーでは購入したエビなどをその場で調理方法を選び、食べることができます。また天井にはオンライン発注された食材をバックエンドに待機しているバイク配送チームに届けるためのベルトコンベアが設置されており、見ていて楽しい演出になっています。もちろん決済はアリババグループが展開するアリペイがメインです。スーパーがアリババというネット企業によるデータ活用を軸に新たな購買体験を提案していく場所になっています。オンラインからオフライン(O2O)、デジタルからリアルへ、と小売業界の変化が進んでいます。このように小売業界で進むネット企業がプラットフォーマーとなりデジタルからリアルへというO2Oの流れが自動車産業にも訪れている、と言えます。

引用: 世界覇権を狙う「自動運転シティー」構想

自動運転分野では先行する百度を追う形でテンセントやアリババも巻き返しを図っており、2018年4月に発表された「自動運転に関する公道テストの指針」後、アリババはすぐに公道試験を行い、テンセントの自動運転車両も北京で目撃されています。

ディープブルーテクノロジー社という新興企業が上海の特定地域限定ではありますが、無人商用車ソリューションを展開しています。まだ管理者として人を乗せた状態ではありますが、アプリで呼べる無人コンビニカーとしてだけではなく様々な移動サービスカーへと発展する余地を秘めています。このようなモビリティプラットフォーム競争においてトヨタがCES2018で発表したe-Palettesがどのように中国勢の進化に対峙、あるいは協業して行くのか、注目です。

私は購買を含む消費空間の一つは移動無人カーになっていくのではないか、ということを考えています。食材(スーパーからのデリバリー)、料理(フードデリバリー)、運転手付きの車両(ライドシェア)はもうすでにアプリで場所を指定して”注文”できるようになっている訳で、それが無人車両による空間になっていくのはイメージできます。つまり、あるサービスを受けたい場合にそのサービス提供が可能な設備、物品、サービス提供者を乗せた自動運転車を場所を指定して呼ぶことができるということです。先日東京で開催されたソフトバンクワールド2018で孫社長が語っていた”交通手段だった乗馬が趣味になっている現代のように、車の運転は趣味になる”という世界になって行くのを感じます。

中国における自動運転を取り巻く法規制について

法規制については米国の先行事例を参考にしながら取り組んでおり、2017年12月に北京市交通委員会が企業の自動運転車の試験運行についての政策を発表しています。ドローン産業の法整備にも通ずる部分ですが、既存法規ではカバーできない新領域をサポートする細かな方針が頻度高く発表されています。特に上記の北京の動き以降は自動運転関連の方針が各所から出ています。

引用: 世界覇権を狙う「自動運転シティー」構想

現在自動運転試験区やモデル地区については上海、重慶、北京、長春等全国で約10箇所あり、先行事例となっているのが上海郊外の安亭です。”自動運転シティー”という都市開発プランの輸出までの構想があるこのエリアには、上海汽車を始め、GMやアウディなどの車メーカーが集結しており、アウディの冠がついたオートレースの競技場まで周辺にあります。
NHKが取材に入っているので詳細は下記参照ください。

中国“自動運転シティー” 巨大プロジェクトに潜入

エリア内には”オートイノベーションパーク”があり、車関係や人工知能関係のスタートアップインキュベーター、技術統合センターが入居する産業パークが存在します。パーク内には正式ナンバープレートがなく、公道試験用ナンバーがついていたり、センサー類がついた車両が複数台あり、まさに実験施設です。さらにこのパークに隣接する公道では自動運転試験が可能になっており、試験用ナンバーを取得すれば走行が可能です。また隣接用地には日本にも進出しているドイツの自動車産業へのサプライヤーであるシェフラーが大きな施設を構えています。

アウディもそうですが、ドイツはかなり中国に入り込んできています。これは深圳でも感じることですが、家電製品もボッシュ、シーメンスなどの製品が増えてますし、インダストリー4.0に関するフォーラムでもドイツからゲストスピーカーが来ていたり存在感があります。

EV産業拠点としての上海、および注目企業の動向

EV界隈の動きとしても上海は注目エリアになって来ています。前述の産業パークに拠点を置いている企業の一つがEV領域で注目されているNIO社です。同社はテンセント、JD、シャオミーから出資を受けており著名IT起業家にユーザーが多いこともあり、注目度が高まっています。乗用車タイプだけでなくオートレース用の車体開発も行っており、フォーミュラにも出場しています。昨年末に量産体制に入り、全国での販売が開始されたes8モデルは充電10分で100キロ走れ、60分で80%の充電が完了します。さらに3分間でバッテリー交換もできる。2020年までに主要都市に1000カ所のバッテリーステーションを設置していき、北京ではガソリンステーションの密度を越していく計画です。

テスラも米国外では初となる工場を上海に新設すると発表し、生産能力50万台にする計画を立てています。

また元BMWのドイツ人コンビが立ち上げた中国・南京に拠点を置くEVスタートアップであるBYTONも新設ショールームを上海(南京西路)に建設中で、2019年にはSUVを市場投入するとのことです。

公共バスの95%以上がBYD(深圳企業)の電気バスになり、同社のEVタクシーの比率が高まり、自動運転バスの試験も行われている深圳と多様なEVベンチャーの集積や自動運転試験区による次世代自動車産業構築を目指す上海、この両地は今後の中国のEV、自動運転領域を占う上で重要なエリアになりそうです。