2018.6.22

環境変化が組織にもたらす影響力

組織視点からの環境変化

各企業において、先の「中小企業白書(2005年版)」、「産業構造ビジョン2010」の指摘に対して、どのような対応を実施されてきたであろうか。その対応は成功したであろうか。ここでは、環境変化の一つの解釈を紹介する。

組織最適化の3レイヤ


組織のハード面での最適化を、①事業領域、②事業構造、③製品・サービス、の三つのレイヤで考える。①事業領域レイヤでは、どの領域を対象とする事業を営むかを明確にする。②事業構造レイヤでは、どのような事業の仕組み(提供価値、収益モデル、差別化)で事業を実施するかを明確にする。③製品/サービスレイヤでは、どのような製品・サービスを提供するかを明確にする。

環境変化の組織へのインパクト


二つの環境変化の組織へのインパクトを、組織最適化の3レイヤに基づいて考察する。

2005年の「ヒット商品のライフサイクルの短命化」は、③製品/サービスレイヤにはインパクトをもたらすものであったが、①事業領域および②事業構造への影響力は限定的であった。主に従来からの業界内の同業他社との競争になり、業界外からの脅威はまだ大きくない。

一方、2010年の「ビジネスモデルの陳腐化」は、3レイヤのいずれにも影響を及ぼすものであり、従来からの業界内の同業他社にとどまらず、新規参入や川上、川下の業界との競争も発生する。ボーダレス化に伴う事業領域の見直しや新たなビジネスモデルの構築を余儀なくされる。結果的に、組織の抜本的な見直しは避けられず、組織形態の再設計が必要とされる。

組織形態の設計

組織設計の枠組み:バリューチェーン


ポーターは「モノの流れ」に着目して企業の活動を①主活動、②支援活動に分け、それにマージン(利益)を加え、全体の付加価値をバリューチェーンとして表現した。①主活動は、部品や原材料などの購買、製造、出荷物流、販売・マーケティング、アフターサービスなどのマージンを創出する活動であり、主に直接部門が担う。②支援活動は、主活動を支える人事、経理や技術開発などの活動であり、主に間接部門が担う。

組織形態へのインパクト


①従来の組織形態

従来の組織形態は、事業環境として市場拡大、市場内シェアなどの製品/サービスレイヤでの競争時代に構築されたものが多く、組織の目的は「成長」であった。

組織形態は、「成長」視点でのパフォーマンスを最大化すべく、バリューチェーンをベースに、主活動に該当する組織をプロフィットセンター、支援活動に該当する組織をコストセンターと位置づけ、構築された。既存のビジネスモデル、事業構造が有効であったため、「変革」の実施頻度は少なく、その活動は非日常活動と位置づけられた。たまに発生する「変革」は、変革プロジェクト、変革推進チームで都度対応として実施された。

例えば、カルロス・ゴーンによる日産の改革のCFT(クロス・ファンクショナル・チーム)での実施は有名である。「変革」に関しては、活動内容(業務)、資産(特に知識)は、担当した個人にとどまり、組織として蓄積、管理されることは少なかった。

②あるべき組織形態

2010年に指摘された「ビジネスモデルの陳腐化」の対応は「変革」であり、「成長」をベースにした組織形態では最適化が十分でない。
今後、ビジネスモデルの陳腐化などの環境変化が一般的になるとするならば、日常的な戦略オプションの一つとして「変革」を組み入れる必要がある。変革を前提にした組織形態ならば、主活動がプロフィットセンター、支援活動がコストセンターという従来の捉え方を見直さなければならない。

つまり、主活動は「現在のプロフィットを生み出す活動」、支援活動は「未来のプロフィットを生み出す活動」という視点に立ち、間接部門が積極的に変革を取り入れていかなければならない。
さらには、支援活動が主導した変革を主活動に還流させ、変革を日常活動として定着させていくことが求められる。

③あるべき組織形態実現に向けた課題

組織形態において「変革」がいまだ非日常活動のままの企業が多い。マネジメントが「変革」の必要性を指摘しても、現場は動かない、または動いても活動が遅いなどの課題が顕在化している。

実現に向けた課題は、①業務の不在、②組織の不在、③資産の不在、という三つである。「①業務の不在」は、何を実施するか、どのように管理するか、具体的な業務を明確にすることである。「②組織の不在」は、どの部門が担当するか、具体的な部門を明確にすることである。「③資産の不在」は、自社としてどのような人財を育成/確保し、知識を蓄積するか、社内外を含めどのように情報流を利活用するか、明確にすることである。これらに関するマネジメントの仕組みも最適化する必要がある。

④あるべき組織形態実現に向けた要諦

これからのマネジメントは、事業構造までを定常マネジメントの領域とすることが求められる。

「変革」へ適応するための組織形態とは、「変革」に対する戦略オプションを検討し、事業を最適化することを目的とした、①業務、②組織、③資産(人財、知識、情報流など)を明確にした組織である。

従来の製品/サービスレイヤの競争を前提にした主活動、支援活動という意識を超えて、組織の機能全体から事業構造レイヤまでを競争領域とした場合の組織の最適化を実施することが有効であるといえよう。