2018.5.19

VUCAの時代における、ビジネスモデルから考える戦略的中期経営計画とは。

良い経営を行うためには、環境―戦略―組織―人財の一貫性を発展させることが必要です。しかし実際には、ビジネス環境が目まぐるしく変わるVUCAの時代に、環境の変化に戦略が追い付かずにミスマッチとなったり、環境に合わせて戦略を変えてもそれに組織や人財が対応できずにミスマッチを起こしたりして、事業の成長が達成できていないケースが見られます。そこで今回は、環境の変化にうまくマッチできる、実効性の高い戦略的中期経営計画の設計のあり方を考えます。

VUCAの時代の中期経営計画

今、世の中は、変動性があり、不確実で、複雑かつ不明確なVUCAの時代となっています。ビジネスや経営をとりまく環境は目まぐるしく変化しており、予測をたてるのが困難というよりも、予測の正解は存在しないとさえいえる時代です。 

中期経営計画の策定は、稼げる収益モデルがうまく回る事業構造を構築することが基本です。その事業モデルの構築にあたっては、クロスSWOTの手法により、自社を取り巻く外部の環境と自社の内部の現状を分析した上で、仮説と検証で進めるのが一般的です。つまり、外部のビジネス環境のどこに機会(O)があり、何が脅威(T)となるのかを分析することを指しますが、ビジネス環境が目まぐるしく変化するVUCAの時代では、その時々の機会や脅威の特定は困難です。せっかく工数を投下して精度の高い正確な予測をたてて分析しても、次の中期経営計画策定時には前提自体が変わってしまっており、計画を実行しても効果が全く期待できないというケースが出てもおかしくありません。

特に、事業モデル構築にあたってさまざまな面で影響を与えるデジタルテクノロジー分野は短期間に大きく変化しており、トレンドすら見えにくい状況です。事業モデルにテクノロジーの活用やデジタルマーケティングを組み入れても、1年後にはその流れが変わってしまうことも十分あり得るのがVUCAの時代といえます。

 

単一事業の継続的成長の限界

このようにVUCAの時代では、既存の事業の強化だけでは事業の大きな成長は見込めません。よって、中期経営戦略の策定にあたっては、ビジネスモデルの改革で既存事業の強化と成長を図るとともに、新規事業の開発で非連続の成長を目指す必要があります。しかし、ここで注意しなければならないのは、単一事業では継続的な成長に限界があるという点です。

戦後日本は、欧米で開発された製品を模倣して改良していくことで、高度成長を遂げました。技術革新、つまりイノベーションで品質や性能を向上させ、より高性能で高価格の商品を生み出していくことで成長したわけです。しかし先が読めないVUCAの時代では、このような持続的なイノベーションによる成長はもはやあり得ないと言ってもよいでしょう。例えば、小型化や一眼レフなどの性能向上で成長したカメラ業界は、デジタルテクノロジーとの掛け算で生まれたデジタルカメラという全く新しいコンセプトのカメラの登場で、従来のアナログカメラの機能や性能向上だけでは成長は難しくなりましたし、スマートフォンの登場で、ガラパゴス携帯電話と合わせてデジタルカメラも衰退産業となりました。

スマートフォンの登場は破壊的イノベーションで、持続的イノベーションと対極におかれますが、破壊的イノベーションを追求することは決して簡単なことではないことは想像がつくかと思います。破壊的イノベーションとはつまり、世の中の誰も思いついていない、実行していない変革を自らが第一人者となってイノベーションを起こすことです。そこにはクリエイティブ力も然り、イノベーションに耐えうる資本力も必要となり、その中の多くの企業は簡単に破壊的イノベーションを起こせる条件が揃っているとは言い難いのが事実です。

しかしながら、現実に破壊的イノベーションはカメラ業界を筆頭に様々な業界で起きています。つまり単一事業だけの成長では、破壊的イノベーションによる業界全体の衰退に企業が耐えきれない可能性が高いということです。では、企業が継続的に発展を続けるためには、どのような戦略をたてれば良いのでしょうか。

事業の連続成長と非連続成長

持続的イノベーションの限界がある現代において求められるのは、破壊的イノベーションを起こすことではなく、事業の成功を複数繋ぎ合わせることにあります。

一見、事業単体にフォーカスをすると事業の寿命が短く、企業として成長していない錯覚に陥りますが、複数事業の成功を繋ぎ合わせることで実は企業としては連続的な成長を遂げていることになります。大切なことは一つの事業で収益が確保できている今だからこそ、次の事業を創り出しておくということです。つまり事業の連続成長から、非連続成長の連鎖へと舵を切ることが、VUCA時代の今、どの業界・企業も求められているということです。

イノベーションによる新規事業は短期的に一気に成長するケースが多く、また急成長する分急速に衰退することもあります。市場やビジネス環境の変化が激しく、一つの事業が半永久的に成長することは望めない時代では、一つの事業にこだわるのではなく、今勝てているフィールドの次は何で勝てるかを常に考え続け、複数の事業やビジネスモデルの成功をひとつなぎにした事業成長が求められます。

ひとつひとつの事業はきれいな連続成長とならなくても、今現在成功して優位にある事業の選択と集中を図ること、そしてその事業は今後もずっと成長し続けるとは限らないことを前提として、ビジネス環境の変化に合わせた新しい事業やビジネスモデルを常に考え続けることで、全体として継続的に成長することができるでしょう。

変化の予測と分析に時間をかけるのではなく、ビジネスモデルのイノベーションを図って成功をつなぎまわし、さらに次のイノベーションを創出することに工数をかけることが、効率的な中期経営計画につながるといえます。また一つのイノベーションにこだわって慎重に時間をかけるのではなく、無駄がなく効率的なリーンスタートアップの手法を適用することも大切です。デジタル領域では、慎重に石橋をたたいていた日本企業は、迅速に新事業を試す欧米企業に後れをとっています。仮説と検証を早いサイクルで回し、小さな失敗を重ねてそれを次に活かすことで、複数事業の成功をつないでいくことが大切です。

まとめ

VUCAの時代に突入した現在では、どれだけ膨大な情報データを収集しても、仮説検証に莫大な時間工数を投下しても、確実にうまくいくであろうと言える根拠を持つことはとても困難であり、ほぼ不可能となりました。
さらに、企業が成長を続けるためには、単一事業を継続的に成長させていくことではなく、複数の事業の成功を非連続的に繋げていくことが企業には求められます。
VUCA時代における中期経営計画では、まさにこの考え方を踏襲すべきです。
自社のビジネスチャンスに対して日頃からアンテナを立て、常に走り出す準備ができている状態を中期経営計画の中で描くことこそ、企業の成長ロードマップを描くものとなるのです。